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70's/80's Monochrome Age and Years of Ektachrome film

小国 (米坂線) 1972

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30年を過ぎて再びの「SLブーム」と云う。1976年の大井川鉄道に始まり、1979年からの山口線に波及した動態保存車による展示運転は、国鉄の分割・民営化直後から民鉄も含めて静態保管車の動態復元が続いて、運転線区を加えたばかりか、それ以外で運転される機会も増えて全国各地に煙を上げているような錯覚すら覚える。この2014年には釜石線でさらに1両が走り出す。
2000年代を迎えて、もはや鉄道自体がノスタルジィの対象と成り果てたところに、ディジタル写真の爆発的普及も手伝い、再びに人々の群がってのブーム化であろう。

ブーム故のことか、それが呼び込んだものか、山口線運転当初に在った動態運転による産業遺産保存の意識は希薄となり、民間資本による蒸機列車の運行は今や観光資源である。電気暖房の14系客車に積まれた石炭ストーブなど笑えない冗談はさておき、山口線に磐越西線の12系も別に蒸機に牽かれなくとも良さそうな観光仕様がなされている。機関車自体にも非営業の動態復元車に空気圧で可動させるなど玩具扱いの展示まで出現する始末であり、観光対象として厭きられれば打ち捨てられるのではと危惧する。
営業線上の営業列車ではあるが、単独で採算の採れるはずもなく、それにて有形無形の恩恵を被る沿線自治体の直接間接の資金協力を含め、北海道旅客鉄道による季節を変えての各線運行は札幌からのパック旅行に組まれ、東日本旅客鉃道の磐越西線運行も、2014年からの釜石線運行も新幹線利用を促進してこそであるから、将来にそのメリットの失われても運行は継続されるのだろうか。自治体の協力も、客足の低下すれば期待出来まい。観光資源として顧みられなくなれば、運行経費はもとより、法定の検査経費や修繕経費は何処の誰が負担するのだろうか。営利企業にそのインセンティヴは無い。

動態運転の本義は産業遺産の保存にある。観光需要に迎合した趣向では無く、隧道に入れば車内に煙の充満し、客窓を開けて旅すれば顔は煤に汚れ、それをホームの洗面台で洗い流す追体験の出来てこそに思う。
その理想とも思えた北海道鉄道文化協議会による函館本線運行や日本ナショナルトラストの大井川鉄道運行の挫折は、欧米での事例に範を求めながらも歴史遺産に対する日本人意識の落差を改めて認識させる出来事であった。本来ならば国家事業であるべきそれの保存が寄付や募金で充足せぬとなれば、運行側も運転区所等での催事の有料化は勿論のこと、河川での入漁料宜しく沿線の特定位置からの撮影への課金も考えねばなるまい。輸送手段には既に不要となった運転の再現である。将来に煙を絶やさぬにも、撮影者の意識が問われよう。繰返すが、それの全てを資本に委ねるのは危険である。

蛇足乍ら、安易に交わされる「SL=エスエル」なる言葉について言及しておきたい。
Steam Locomotiveの頭文字を取ったSLとは、本来にそれまでは蒸気機関車だけだった機関車に電気や内燃動力車が入り込んで来た動力近代化の時代に、国鉄部内でそれを区別する必要からの記号であった。それゆえ技術用語として蒸機の直訳であるSteam Locomotiveの略号が使われたのである。
なので、これはネイティブの英語圏(特に英国とその連邦諸国)においては少しも一般的では無い。半ば和製英語と考えた方が良く、そこでは単にSteam若しくはSteam Engineである。
ちなみに、電車はElectric Railcarだし、客車はCoachあるいはPassenger Wagonと呼ばれるから、PC・EC・DCも国鉄部内の区別記号に過ぎない。
このような記号を敢えて部外者の用いる必要は無いと考えるが、「SL」を多用されるなら、これをご理解の上でと願う次第である。

蒸機ブームの最中、1972年3月14日のここでの蒸機最終運転となった130列車。惜別列車の混合125列車を重連で牽いた9634の帰区を兼ねて、こちらも重連運行であった。9634+59634は偶然なのか、意図的だったのか。
降雪の中、鉄道屋よりも多くの地元住民に送られて出発して往った。

[Data] NikonFphotomicFTN+AutoNikkor5cm/F1.8 1/60sec@f4 Y48filter NeopanSSS Edit by PhtoshopLR4on Mac.
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コメント

Re: タイトルなし

こんにちは。
いつも、ありがとうございます。

その通りに、蒸機は「人寄せパンダ」に過ぎぬ所以です。いつまでも人の集まるならば、それも良いのですが。
五能線を始め、それを前例とした全国のリゾート車両・列車にも個人的には否定的です。撮りたくもないし、乗る気にもなれません。
せっかくの五能線なのに、夏なら北辺の海風も感じられませんし、冬の窓からのすきま風も体験出来ません。
土地の空気と隔絶された列車に乗りながら通過するばかりの、用意された体験観光とやらは何とも貧しいことでしょうか。

  • 2014/02/05(水) 19:05:45 |
  • URL |
  • Wonder+Graphics #-
  • [ 編集 ]

こんにちは。
米坂線の山間部を走る姿、迫力あったことでしょうね。今ではステンレスの真新しい気動車が走るこの路線の姿からは想像もしがたいものがあります。
今の新しい気動車の、駅を発車するときの加速、上り坂でのスピード感、鉄道が新しい技術によって進化していると体感できたときの嬉しさがあります。
そのような順当な進化の中に、価値を認める過去の技術を体感する機会が提供されれば、実に豊かなことなのかもしれません。
私、単純な疑問なのですが、走る列車に乗っているときは、当然居場所は機関車ではなく客車です。いくら蒸気機関車が牽引しているとはいえ、窓も開かない、改装された客車に乗って、楽しいものなのでしょうか。
客車までその時代の古いものを使い歴史を再現するか、走る蒸気機関車を外から見るか、または五能線のように乗ること自体が楽しいリゾート列車か、どれかではないかと思っています。
少なくとも今走っている蒸気機関車のいくつかは、蒸気機関車である必要がないのでは、と…
今後とも、宜しくお願い致します。
風旅記: http://kazetabiki.blog41.fc2.com/

  • 2014/02/05(水) 11:00:37 |
  • URL |
  • 風旅記 #O7xVy9HA
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